不動産の売却を検討する際、誰でも可能な限り高く売却したいと思うものです。
不動産鑑定評価では、その不動産の購買予定者(マーケットのボリュームが大きいと思われる購買者層)を「市場参加者」、その不動産の価値を最大化する使用方法を「最有効使用」と呼びます。市場参加者は、一般ビジネス用語では「ペルソナ」という言葉が近しいかと思っています。
高く売却したい場合、市場参加者を絞り込み、どうアプローチするかを検討することになります。以下では、まず不動産の用途(鑑定評価では「種別」「類型」などといった言葉がありますが、省略)毎に市場参加者とアプローチ方法を整理し、最後に高額売却を実現する方法をご説明します。
なお、以下説明する市場参加者は、転売前提の不動産業者は省略しております。転売前提となると粗利益分価格が下がるため、高額売却の主旨から外れるためです。本件では転売前提の業者への売却は省略しますが、当該業者は早期決済する資金準備があり、一旦不動産を保有した上で建物を補修し、境界確定の実施や権利関係の整理を行うなどにより、不動産流通市場に貢献していることも付け加えておきます。
【不動産の用途毎にみる市場参加者及びそのアプローチ方法】
1. マンション
① 都心型の高級マンション(タワーマンション含む)の市場参加者
株式会社東京カンテイが2025年3月24日に発表した「70㎡換算価格推移」によると中古マンション平均希望売り出し価格は、東京都心6区(千代田・中央・港・新宿・文京・渋谷)で70平方メートル当たり1億5107万円とされています。この価格帯を購入できる市場参加者を細分化して考えると、以下の三者が想定されます。
a. 自己居住することを志向するエンドユーザー
1億円台半ばの金額の支払い能力があるエンドユーザーは、富裕層か高所得世帯のパワーカップルということになります。従って、この細分化された市場参加者に対するアプローチ方法は、富裕層・高所得世帯を中心に取り扱う売買仲介業者、又はそのエリアにおいて日頃から購買ニーズをキャッチしている様々な大手仲介業者経由ということになります。その他、SUUMO、アットホーム、HOME’Sで募集し、直接エンドユーザーにアクセスします。
b. 相続対策を志向する富裕層
「タワーマンション節税(商標登録:スタイルアクト株式会社)」という言葉があるように、都心型マンションの購入については、以前は非常に強力な節税方法でした。一般的に、都心型マンションの相続税評価額は市場価格の20~30%であることが一般的で、相続対策として大きな役割を担っていました。しかし、2024年1月に相続税法が改正された後は、相続税評価額は市場価格の60%までとなっています。それでも、都心型マンションの資産性を魅了に考え、未だに相続対策の一環として都心型マンションを志向する富裕層は相当数います。
この細分化された市場参加者に対するアプローチ方法は、富裕層・高所得世帯を中心に取り扱う売買仲介業者経由になります。
c. 日本への資金移動を志向する外国人富裕層
以前から外国人富裕層による需要はありましたが、昨今特に高騰しています。我々の感覚では、最近の東京のマンション価格は高いという共通認識がありますが、世界的には割安であり、円安に推移する為替環境がさらに外構人富裕層に有利に働いています。この細分化された市場参加者へのアプローチ方法は外国人富裕層を中心に取り扱う売買仲介業者経由になります。
② 一般的な勤務者層の資金負担力で購入できるマンション(3000~8000万円程度)
細分化された市場参加者は、上述の相続対策による需要、外国人による需要もありますが、自己居住することを志向するエンドユーザーが中心になります。従って、この細分化された市場参加者に対するアプローチ方法は、そのエリアにおいて日頃から購買ニーズをキャッチしている様々な大手仲介業者経由ということになります。その他、SUUMO、アットホーム、HOME’Sで募集し、直接エンドユーザーにアクセスします。
③ 単身(ワンルーム)の投資用マンション(500~3000万円程度)
市場参加者は、投資用マンションのセミナー受講、書籍購読などを通してワンルームマンション投資を希望する個人投資家になります。売却アプローチ先は投資用マンションを専門に扱う仲介業者になるのですが、売買金額が比較的少額になるため、どちらかというと三為契約※により業者が粗利を多くとる(=売主の売却益が低くなるか、買主が割高に買うことになります)ことになる取引が多い印象を持っています。アプローチ方法は、三為契約ではなく、純粋な仲介手数料のみで業務を遂行する売買仲介業者経由になります。その他、楽街・健美家といった収益物件ポータルサイトで直接個人投資家にアクセスします。
※三為契約とは「第三者のためにする契約」の略で、売主Aと買主Cの間に、転売を前提とした業者Bが入り、AとBが契約するが、その効力は最初からCに帰属するという契約形態です。つまり転売の一種なので、A・B・Cのゼロサムゲームで考えると業者Bの粗利が多くなればなるほど、売主A・買主Cの利益は少なくなります。
2. 一戸建て住宅 又は 住宅用の土地(分割できない土地)
① 都心の高額な一戸建て住宅 又は 住宅用の土地
都心型の高級マンション同様、a.自己居住することを志向するエンドユーザー、b.相続対策を志向する富裕層、c.日本への資金移動を志向する外国人富裕層になり、そのアプローチ方法も富裕層・高所得世帯を中心に取り扱う売買仲介業者又は様々な大手仲介業者になります。その他、SUUMO、アットホーム、HOME’Sで募集し、直接エンドユーザーにアクセスします。
② 一般的な勤務者層の資金負担力で購入できる一戸建て住宅 又は 住宅用の土地
細分化された市場参加者は、自己居住することを志向するエンドユーザーが中心になります。従って、アプローチ方法はそのエリアにおいて日頃から購買ニーズをキャッチしている様々な大手仲介業者経由になります。その他、SUUMO、アットホーム、HOME’Sで募集し、直接エンドユーザーにアクセスします。
3. マンション用地、ビル用地
市場参加者はデベロッパーやゼネコン等、又は自社ビルや営業拠点の建築を志向する事業会社や医療法人になります。アプローチ方法はデベロッパー・ゼネコン等の中で最高値を提示する先を探索するか、事業会社の自社ビル・営業拠点ニーズを把握する様々な金融機関にヒアリングし、需要が強い事業会社を探索します。エリア別、面積・金額別にそれぞれ得意な分野があるため、その用地に強く興味を示す先にアプローチすることが重要です。
4. 戸建分譲用地
近年、都市部では地価高騰により、従来は50~60坪あった土地が、15坪程度に細分化されて分譲されるケースがあります。このような土地の場合、市場参加者は戸建開発業者(ハウスメーカー、パワービルダー)になります。アプローチ方法は戸建開発業者へのタッピングということになりますが、戸建分譲用地もエリア別、面積・金額別にそれぞれ得意な分野があるため、その戸建分譲用地に強く興味を示す先にアプローチすることが重要です。
5. 投資用マンション、アパート
① 総額10億円程度~
市場参加者は不動産ファンド(J-REITや私募ファンドの運用会社又はスポンサーとしてのデベロッパー)、相続対策を志向する富裕層、日本への資金移動を志向する外国人富裕層が考えられます。当該市場参加者へのアプローチ方法はファンド関係者へのタッピング、富裕層・高所得世帯を中心に取り扱う売買仲介業者経由、外国人富裕層を中心に取り扱う売買仲介業者経由ということになります。
② 総額3億円~5億円程度
市場参加者は、比較的資金力が大きい個人投資家、資産運用目的の事業会社、中長期保有前提の不動産業者等、相続対策を志向する富裕層、日本への資金移動を志向する外国人富裕層が考えられます。当該市場参加者へのアプローチ方法は、日頃個人投資家相手にセミナー・仲介業務を行う売買仲介業者、富裕層・高所得世帯を中心に取り扱う売買仲介業者経由又は外国人富裕層を中心に取り扱う売買仲介業者経由ということになります。
③ 総額1億円以下
市場参加者は、会社員等の一般的な個人投資家が考えられます。当該市場参加者へのアプローチ方法は、個人投資家や経営者相手にセミナーや懇親会を行うことにより繋がりをもつ投資物件専門の仲介業者経由、富裕層・高所得世帯を中心に取り扱う売買仲介業者経由又は外国人富裕層を中心に取り扱う売買仲介業者経由ということになります。その他、楽街・健美家といった収益物件ポータルサイトで直接個人投資家にアクセスします。
6. オフィスビル・店舗ビル
① 総額20億円~
市場参加者は不動産ファンド(J-REITや私募ファンドの運用会社又はスポンサーとしてのデベロッパー)、相続対策を志向する富裕層、日本への資金移動を志向する外国人富裕層が考えられます。当該市場参加者へのアプローチ方法はファンド関係者へのタッピング、富裕層・高所得世帯を中心に取り扱う売買仲介業者経由、外国人富裕層を中心に取り扱う売買仲介業者経由ということになります。
② 総額5億円~10億円
市場参加者は、中長期保有前提の不動産業者等、相続対策を志向する富裕層、日本への資金移動を志向する外国人富裕層のほか、比較的資金力が大きい個人投資家が考えられます。当該市場参加者へのアプローチ方法は、富裕層・高所得世帯を中心に取り扱う売買仲介業者経由、外国人富裕層を中心に取り扱う売買仲介業者経由、又は日頃個人投資家相手にセミナー・仲介業務を行う売買仲介業者ということになります。
③ 総額3億円程度以下
市場参加者は、比較的資金力が大きい個人投資家、資産運用目的の事業会社、中長期保有前提の不動産業者等が考えられます。当該市場参加者へのアプローチ方法は、日頃個人投資家や経営者相手にセミナーや懇親会を行うことにより繋がりをもつ投資物件専門の仲介業者経由、富裕層・高所得世帯を中心に取り扱う売買仲介業者経由又は外国人富裕層を中心に取り扱う売買仲介業者経由ということになります。
④ 倉庫、工場、病院・クリニック、介護施設(有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅、グループホーム等)、ビジネスホテル、またはこれらの用途が見込まれる
土地、あるいは建築物の建築が不可能な土地
文字数の都合上、詳細は割愛しますが、上記でこれまで説明したように、取引金額の総額別に、不動産ファンドやデベロッパー、自己利用目的の事業会社や医療法人、不動産業者等がそれぞれの市場参加者と繋がりを持つ売買仲介業者、金融機関へアプローチします。詳細はお問い合わせ下さい。
【高額売却を実現する方法】
1. 特定の仲介業者のみで全ての市場参加者へのアプローチは不可
これまで見てきたように、一つの不動産仲介業者で全ての市場参加者の購入ニーズを把握していることはまずありません。不動産仲介業者は、市場参加者の属性(個人・法人・国内富裕層・外国人富裕層・個人投資家・不動産ファンド・不動産業者・事業会社)や取引金額規模に応じ、付き合いのある市場参加者が異なるためです。
2. 不動産仲介業者の利益相反(「片手」仲介を推奨)
不動産仲介業者は売買が成立した際に受け取る仲介手数料が報酬になりますが、売買が成立するためには、仲介業者が高く売りたい買主と安く買いたい買主の合意形成を図る必要があります。従って、不動産仲介業者が一社で売主と買主を担当する(これを業界用語で「両手」と言います)場合、利益相反が生じ、売主の利益最大化を図ることはできません。米国などでは、エージェントとして顧客の利益最大化を図るため、売主と買主の両方を担当することは州ごとに規制されています。大手不動産業者や金融機関系列の不動産業者は、自社である程度の買主顧客も抱えているため、可能な限り両手仲介を実現しようとします。そのために、以前から問題になっている「囲い込み※」が発生してしまうわけです。
一方、不動産仲介業者が売主のみ担当する、又は買主のみ担当することを業界用語で「片手」と言ったり「売り買い分かれ」と言ったりします。この場合、売主側仲介業者と買主側仲介業者それぞれの顧客のために相手方と交渉することになりますので、利益相反は生じません。
以上より、高額売却のためには「片手」仲介を推奨します。
※囲い込み
売主から売却を依頼された仲介業者が、自社で付き合いのある買主のみに情報を提供する目的で、売却物件情報を公開せず、問い合わせがあっても虚偽の理由をつけて物件紹介断絶すること。自社で両手取引を行うことを目的としているために生じる。
3. 高額売却の方法その1:「売却専門エージェント」の勧め
これまで説明したように、不動産仲介業者1社で最高値を提示する市場参加者(買主)を探索することはできません。不動産仲介業者別の市場参加者の属性の違いと、利益相反の論点があるためです。高額売却を実現するためには、売却専門に特化したエージェントを探索し、市場参加者別の(買側担当の)仲介業者に広く物件情報を周知し、売主側の着眼点で交渉してくれる「売却専門エージェント」に売却を依頼する必要があるのです。当社は売却専門エージェントとして、高額売却を実現するため、幅広く買側担当の仲介業者と連携しており、どのような不動産でも、その不動産に応じた市場参加者を抱える仲介業者に多数声かけできる体制を構築しております。
4. 高額売却の方法その2:「専任媒介契約」と「一般媒介契約」について
不動産の売却を仲介業者に依頼する際、その仲介業者にだけ売却活動を依頼し、他の仲介業者には売却活動を依頼しないことを約定する契約形態を「専任媒介契約」、他の仲介業者にも売却活動を依頼できる契約形態を一般媒介契約と言います。どちらが高額売却に向いているかは、売主が売却専門エージェントに依頼するかどうかで分かれます。
① 売却専門エージェントに依頼しない場合
売却専門エージェントに依頼しない場合は、一般媒介契約を推奨します。理由は上記で述べたように、依頼した不動産業者が両手仲介を考える可能性があり、利益相反により売却価格の最大化が図れない可能性があり、さらに物件情報の囲い込みの懸念もあるからです。そのため、一般媒介契約にし、他社経由でも売却できる体制にする必要があるのです。
② 一般媒介契約のデメリット
ただし、一般媒介契約には「物件情報の価値が下がる」というデメリットがあります。主な例は、例えばマンションや戸建購入を検討する場合に、SUUMO・アットホーム・HOME’Sといったポータルサイトを見る際、同じ物件情報が5社・10社から出ていると、探索者に「人気が無い物件なのではないか」と思われ価値が低下するのです。高額売却するためには物件情報の取り扱いが非常に重要であり、「出回り物件」になってしまうことで物件情報の価値が低下してしまうのです。また、不動産業者は売却依頼を受けた際、「レインズ」という不動産業者専門のポータルサイトに物件情報を登録するのですが、一般媒介契約をみた他の不動産業者は、「この売主は一般媒介にしているくらいだから売却専門エージェントは付いてないだろう。うちとも媒介契約できるのだから無理やりでも連絡を取ろう」と、売主に直接連絡を取ろうとします。様々な方法で売主の電話番号を調べ、突然電話が鳴り、さらには見知らぬ不動産業者が自宅に突然訪問する(不動産の登記を取得すると所有者の住所が記載されています)ということが発生したりします。このことも一般媒介契約のデメリットとして挙げることができます。
③ 売却専門エージェントに依頼する場合
売却専門エージェントに依頼する場合は「専任媒介契約」の方が高額売却できる可能性は高くなります。その理由は、上記の通り、売却専門エージェントであれば利益相反も囲い込みも発生しないからです。また、売却専門エージェントは不動産の用途毎に細分化される市場参加者にアプローチするため、市場参加者の属性(個人・法人・国内富裕層・外国人富裕層・個人投資家・不動産ファンド・不動産業者・事業会社)に応じ、それぞれの市場参加者を抱える(買い側)仲介業者に連携を取ります。また、情報も厳選して取り扱い、レインズに登録するときも、専任媒介契約と表示されていれば、それをみた不動産業者は「売却専門エージェントが付いているので連絡を取ってもうちとは媒介契約できない」と売主への連絡を諦めます。
5. 高額売却の方法その3:市場参加者が高額検討できる状況を準備
市場参加者のうちでも、特に個人や不動産業者ではない法人は、不動産という高額な買い物をすることになるため、様々なリスクを警戒するものです。このようなリスク要因を排除することで、買主は不安が解消され、高額売却を実現できることがあります。
例えば、実際に土地家屋調査士等が測量した土地の面積が、登記簿上の面積より多い(「縄伸び」と言います)ことや、少ない(「縄縮み」と言います)ことがあったり、隣地の建物の樋や庇、塀が越境してきていることで実際に使用できる面積が少なかったり、逆に売却不動産の一部が隣地に越境し、隣地から撤去を求められるリスクを内包していることがあります。従って、決済・引渡しまでに土地家屋調査士に境界の確定と確定測量、さらに越境している場合はその覚書を隣地地権者と締結することで、リスクが解消されます。
また、古家・塀を解体し、造成工事を行い上記の境界確定・測量を行って売却すると、見た目も綺麗な更地であり、実施前より高額な価格で売却することができます。不動産業者が売主となる際に良く行われることであり、このような綺麗な更地を、「完全な宅地」の略称で「完宅」と言ったりします。ただ、売却前に工事・測量等を行うため、各工事業者・土地家屋調査士に支払う先行投資が必要になります。なお、土地の価格水準が低いエリアでは、このような投資金額が売却により回収されるのか検証する必要があります。
6. 高額売却の方法その4:限定入札
戸建開発業者、デベロッパー、不動産ファンド等が買主になる場合、これらの市場参加者は自社の事業採算を算出し、購入可能金額を提示します。その際、もし安く買えるのであれば当然安く買いたいですし、自社の得意エリアで事業シミュレーションに自信があれば、自社の利幅を圧縮して高く提示しても購入したいものです。従ってこれらの市場参加者によるニーズが想定される不動産の場合、限定入札(又は「限定ビッド」と言ったりします)が有用です。
① 限定入札とは
限定入札は、文字通り物件情報を開示する市場参加者を「限定」して「入札」する方法であり、市場参加者を限定せずに世の中に広く情報を公開し、入札することを「完全競争入札(又はフルオープン)」と言ったりします。通常、フルオープンの方が情報を広げられ、様々な買主に情報を提供できるので、高く売却できるように思えますが、実は限定入札の方が高額売却できるのです。
② 限定入札の方が高額売却できる理由
戸建開発業者、デベロッパー、不動産ファンド等は、物件取得を専門とする「仕入部隊(又は横文字でアクイジション)」が配属されていますが、仕入部隊は日々膨大な量の物件情報を入手しており、その中から、社内を挙げて、課長・次長・部長・役員・社長など、金額規模に分けて社内決裁を取ります。この時、世の中に出回っている物件情報の稟議は、上司の合意を取ることが難しくなります。先ほど一般媒介契約のデメリットでご紹介した物件情報の価値が低下することと似たような話になります。従って、「わざわざフルオープンの入札案件は検討しなくて良い」という考え方が一般的なのです。
③ 限定入札の方法
限定入札は、その不動産が属するエリア別に、特に需要が強い検討業者を3~5社リストアップします。次に検討業者に対して、応札期日を設定し、入札要綱を作成して配布します。
この時、入札要綱には売買条件を的確に設定することが重要になります。例えば、戸建開発用地であれば「引渡しまでに境界を確定し、越境・被越境があれば覚書を締結する」などといった条件を整理します。一見、売主に不利な条件をわざわざ設定しているように思えますが、これは高額売却のためには必ず必要な条件になります。なぜなら、戸建開発業者が土地を区画割りして販売する際、境界が確定していなければ法務局に分筆を認めてもらうことができないからです。つまり、その土地について強く購入検討する戸建開発業者は、境界が確定されるという売買条件がなければ、稟議を社内に諮ることが難しいということになるのです。このように、売却する不動産に応じて、市場参加者が高額で応札できるように適切な売買条件を設定します。
④ 限定入札の際に重要なこと(公平性の確保)
入札期間中に検討業者は応札価格を検討し、応札日までに購入申込書(=応札書)を仲介業者に提示し、仲介業者は応札書を開封するのですが、検討業者に対しては、購入申込書を売主の面前で開封し、開封の瞬間をビデオ撮影して共有することを伝えます。その目的は、売却専門エージェントが不正に応じないことを宣誓することにあります。不動産業界の悪しき習慣ですが、入札の場合、ある特定の検討業者が仲介業者に金銭を支払い、有利に入札を進めようとすることがあるのです。例えば、高い金額を記載した応札書と低い金額を記載した応札書を準備し、競合他社の応札金額によって売主に提示する応札書(高い方・低い方)を変えるといったことがあります。又は、応札書の開封後、最高価格をある特定の検討業者に伝達し、最高価格を更新した応札書をさらに再度提示するか検討することがあります(これを「ラストルック」と言ったりします。つまり後出しジャンケンです)。
戸建開発業者、デベロッパー、不動産ファンド等は、このような不正が行われる可能性を重々承知しているので、「自社の指示に応じてくれる仲介業者の場合は真剣検討するが、そうではない場合は参加しない」といった動機に繋がってしまうわけです。ところが、「不正は一切行わない」と宣誓された入札で、さらに「ライバルは2~4社程度しかいない」といった場合はどうなるでしょうか。その場合、各検討業者は社内で最高値を提示してでも入札に参加したいという旨の稟議書を回付することができるのです。
⑤ 限定入札の有用性
このように限定入札は売却専門エージェントの知識・経験が必要な売却手法になりますが、高額売却のために非常に有用な売却手法になります。
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