空家・遊休地の相続対策

「空家や遊休地は相続税が高くなる」と聞かれたことはございますでしょうか。
建設会社からアパートの建設を提案される理由として良く説明されることです。今回は、
1.空家・遊休地の相続税が高くなる理由 と、
2.アパートなどの収益物件を建設した方が良いのか という2点を考えてみたいと思います。

1. 空家・遊休地の相続税が高くなる理由(資料1ページ目)

相続税が高くなる理由としては以下の2点の理由から高くなることがあります。

 

空家・遊休地の相続税が高くなる理由1)相続税評価方法により相対的に高くなるため。

 

 相続税法上の財産評価は財産評価基本通達という国税庁の定める法令解釈通達に記載があり、簡単に説明すると以下のような評価方法になります。

(ア) 空家・遊休地の相続評価

 空家・遊休地は「自用地評価」という評価方法になり、収益物件(貸家建付地・貸家)との比較において、評価額が高くなります。自用地の評価は、街中の土地なら相続税路線価というものが敷設されており、住所を入力して簡単に調べることができます。
 以下のリンクをクリック頂くか「全国地価マップ」と検索サイトに入力してみてください(全国地価マップ)。土地の前面道路に矢印が引かれ、数字とアルファベットが並んでいます(etc.215D など)。この数字部分が㎡あたりの路線価で単位は千円となります(etc.215Dの路線価は215,000円/㎡)。
 そして、土地に目立った特徴(etc.斜面で擁壁がある、形状が悪い など)が無ければ、この路線価に面積を掛け算すれば、概ねの自用地評価額を把握できます。また、土地のうえに建物が建っている場合、その建物は固定資産税評価額で評価されます。固定資産税評価額は、毎年4月頃に公共団体から郵送されてくる課税明細書に記載されています。
 これで土地と建物それぞれの財産の評価額について概ね把握することができます。

(イ) 収益物件の相続評価

 収益物件の土地は、相続評価上「貸家建付地」、家屋のことを「貸家」といいます。貸家建付地は上記の自用地同様、相続税路線価に面積を掛け算しますが、さらに「貸家建付地の評価割合」を掛け算することができます。この評価割合は、
 1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合 という式になります。
 この時、借地権割合は、上記の全国地価マップで土地の前面路線価を調べた時のアルファベットが借地権割合を示しています。少し分かり辛いのですが、Aは借地権割合90%、Bは80%、Cは70%とアルファベットが1つ増える度に借地権割合は10%ずつ下がっていきます。例えば、東京都心であれば、住宅地でもC(70%)がついていたりします。
 また、借家権割合は、2025年2月時点で30%です。
 賃貸割合は、賃貸されている割合であり、建物全体を賃貸していれば100%です。
従って、例えば借地権割合70%、賃貸割合100%であれば、評価割合は79%となります(1-借地権割合70%×借家権割合30%×賃貸割合100%)。
 また、貸家(収益物件の家屋)の評価は固定資産税評価額に「1-借家権割合30%=70%」を掛け算して算出します。

(ウ) 収益物件が、想定的に相続評価額が低くなる理由

 以上より、収益物件と空家・遊休地を比較すると、土地については評価割合の分だけ収益物件の方が低くなり、家屋については借家権割合30%分だけ収益物件の方が低くなります。
 ところで、街中であれば、相続税路線価は通常実勢価格より低くなりますので、金融機関から借入を起こして収益物件を立てれば、不動産の相続評価は実勢時価と比較して、①相続税路線価と実勢時価の差分だけ、②土地は評価割合分だけ、③家屋は借家権割合だけ 評価がさがることになります。これが、建設会社がアパート建築を推奨する理由の1つ目です。


空家・遊休地の相続税が高くなる理由2)小規模宅地等の特例が適用できないため


 不動産の相続評価上、一定の要件を満たすと、「小規模宅地等の特例」と言われる評価を大幅に減額できる特例を適用できます。
 例えば、亡くなった方(「被相続人」といいますと同居している親族等がその自宅を相続する場合は評価額の80%が減額できたりします。
 ところが、空家・遊休地の場合はこの特例の要件に当てはまらず、特例を適用することができません。
 一方、被相続人が収益物件を建築して賃貸運用し、親族が相続する場合は、土地200㎡まで評価額の50%を減額することができます。居住用不動産で特例を適用する場合より、収益物件で特例を適用することが要件をクリアしやすい(被相続人と同居してなくて良いなど)という点が、建設会社がアパート建築を推奨する理由の2つ目です。

2. アパートを建設した方が良いのか(資料2ページ目)

 それでは、全国どこでも空家・遊休地の場合には収益物件を建築した方が良いでしょうか。勿論そんなことはありません。2025年2月現在、日銀の政策金利が上昇しつつあり、建築費は高騰しており、さらに人口減少・少子高齢化により、日本中でコンパクトシティ化*を推進しており、人口集積の非推奨エリアは、賃貸需要が加速的に弱まっていくことが予想されています。従って、このような地域では相続評価額の減額分以上にコスト・損失が大きくなる可能性があるのです。
*コンパクトシティ化…都市再生特別措置法という法律で、人口集積を推奨するエリアと推奨しないエリアが区分けされています。


賃貸需要がある地域に所在する不動産では、空家・遊休地の有効活用の方法として、
(ア) アパートなどの収益物件を建てる(資料2枚目のプランA)
(イ) (建築費を負担することなく)デベロッパーと一緒にマンションを建てる(等価交換)
(プランB)
(ウ) 土地を賃貸する(プランC)
という3つの手段があります。
 一方、賃貸需要が弱いエリアでは、上記のとおり①収益物件の建築コストや②銀行に借入を起こす場合の金利、さらに③賃貸需要が弱いのに無理に収益物件を運営する損失が、相続評価額の減額分を超えてしまうため、相続対策が失敗に終わるケースがあります。この場合には、無理にその空家・遊休地にアパートを建設するのではなく、賃貸需要がある都心にある収益物件に
(エ) 資産を組み替える(賃貸需要の不動産を売却し、賃貸需要なる街中の物件を購入する)
ことが合理的です(資料のプランD)。
 

3. 当社サービス

当社では、
①収益物件を建築することが経済的に合理的なのか、
②デベロッパー・建設業者との協働事業(等価交換事業)は可能なのか、
③土地を賃貸することは可能なのか、
④郊外の資産を売却して都心に組み替えることが合理的なのか
という有効活用のお悩みに対し、ご所有の不動産の状況と、ご依頼者様・関係者の状況を総合的に勘案したうえで対策をご提案させて頂きます。
 不動産の有効活用に関するお悩みがございまいたらぜひ当社にご連絡ください。