親族間売買における「みなし贈与」のリスク

「不動産を子どもに譲りたいが、生前贈与は贈与税がかかるから、売買で譲渡しよう。売買価格は子供の負担が少なくなるように低めに設定してあげようかな」
「自宅の住宅ローン減税期間が満了したから、不動産を自分が経営する法人名義にしようかな」


 このような動機により、親族間または同族会社間で不動産が売買されることがあります。第三者に不動産を譲渡する場合は、完全競争市場の下で第三者と価格合意することが必要なので、基本的には価格をいくらで売買しても、後に税務署から何かの指摘を受けるリスクは高くありません。
 一方、親族間で売買する場合や同族会社と売買する場合、税務署は「租税回避行為がないか」厳しくチェックします。
今回は、1.税務署からどのような文書が来るのか、2.税務署から低廉譲渡と見做されるとどうなるのか3.低廉譲渡と見做されない場合にはどうするのか について考察したいと思います。


1. 税務署からのお尋ね文書

 不動産を現金で売買した際、税務署から「お尋ね文書」が届く場合があります。この文書を放置していると催促され、さらに放置すると税務調査を受ける可能性がありますので、早期に回答することがベターです。回答義務があると考えて頂いた方が良いと思います。
 余談ですが、不動産を購入した場合、国土交通省からも「アンケートのお願い」という文書が届き、土地・建物の売買価格などのアンケートを依頼されることがありますが、こちらは本当にアンケートの主旨で、無回答でもペナルティはありません。このアンケートは、日本国土の地価を分析し、地価の上昇下落を判断する材料となりますので、もしよろしければご協力をお願いします。
 本件に話を戻し、「税務署からのお尋ね文書」ですが、まずは上段で第三者との売買で完全競争市場状態にあったかどうかをみられます。親族間・または関係会社との売買であると、税務署から租税回避行為はなかったか注意してみられることになります。
 次に下段で、売買情報をみて租税回避行為の有無を具体的にみられることになります。


2. 税務署から低廉譲渡があったみなされるとどうなるのか

 それでは税務署から低廉譲渡があったと見做されるとどうなるのか、売買が個人間売買(例:親⇒子へ売買)のケースと、個人・法人間売買(株主・社長⇒会社)のケースに分けて考察したいと思います。

(ア) 個人間売買(例:親⇒子へ売買)のケース

買主(子)はみなし贈与として贈与税の課税対象となります。贈与税率は非常に高額で、例えば3000万円で親子間売買したが、税務署が時価は6,000万円だったと見做した場合、差額の3000万円がみなし贈与と判定されると納税額は1195万円となります。恐ろしいことに、この1195万円に延滞税(年14.6%)・利子税(年7.3%)などがもれなく上乗せされ、将来実際に納税する時にはとんでもない金額になっています。

(イ) 個人・法人間売買(株主・社長⇒会社)

 株主社長が会社に自宅を譲渡した際、税務署から低廉譲渡と見做されると、法人は受贈益課税され、法人税等の課税対象となります。そして株主が社長以外にいる場合には、なんと、同族会社の価値が増加したのだから株主社長から他の株主へ、株価上昇分の贈与があったと見做されることがあります。
 そして先ほどと同じく、実際に納税する時には延滞税・利子税が上乗せされることになります。

3. 税務署から低廉譲渡と見做されないためにはどうすれば良いのか

 それでは、このような事態を避けるためにはどうすれば良いのか、もちろんご自身で完全競争市場において第三者に譲渡する価格(正常価格)と同額で売買すれば良いのですが、なかなか普段不動産に関わっていなければ、この正常価格を判断することはできません。そこで以下3点ご紹介させて頂きます。


(ア) 不動産鑑定士による不動産鑑定評価書

 不動産鑑定士による不動産鑑定評価書を取得し、税務署へ提出する方法です。提出するタイミングや価格は、事前に税務署と相談するのがベストです。一方、確定申告のタイミングや「お尋ね文書」が来たときでも有効です。不動産鑑定士事務所に支払う報酬が発生しますが、こちらが最もリスクを低減する方法になります。

(イ) (不動産会社による)価格査定書

 不動産会社に依頼すれば価格査定書を作成してくれるケースがあります。ただし、不動産会社は、本来売買の仲介や買取りを目的として価格査定書を作成するので、親族間・同族間売買が目的としており、第三者への仲介が発生するわけではない旨をあらかじめ伝えてください。価格査定書を作成してもらった後で伝えると、不動産会社から不満を受け、お互いに嫌な気持ちになるケースがあります。

(ウ) 不動産売買契約書・重要事項説明書を作成する

 不動産会社に報酬を支払う前提で、不動産売買契約書・重要事項説明書の作成を依頼するケースです。手数料の法定上限は、売買金額の3%+6万円と消費税等になりますが、価格査定書を作成したうえで、不動産会社が作成する不動産売買契約書・重要事項説明書を備える公平な売買を税務署に申し伝えることができます。また、売買契約書を作成することで、例えば親子間で売買の条件を明瞭に整理し、将来もめ事がないように備えることができますし、重要事項説明書を作成することで、不動産が内包するリスクを予め把握することができます。

4.当社対応

 当社は(ア)不動産鑑定士による不動産鑑定評価書 の作成と(ウ)不動産売買契約書・重要事項説明書を組み合わせる事で、税務リスクに備えると共に、売買条件を整理し、不動産が内包するリスクもご説明いたします。費用は、ダブルでかかることはなく、不動産鑑定評価報酬または売買金額×3%+6万円と消費税のどちらか高い方を基本としていますが、不動産が都心にあり、報酬が高くなってしまう場合には割引のご相談に対応させて頂きます。

不動産のお悩みございましたら、初回面談は無料ですので、お問い合わせにつきましては、右カッコ内のお問い合わせフォームのリンク(お問い合わせ | 西武不動産鑑定 株式会社)または 03-4500-6270 にてお電話ください。

 

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●(ご参考)税務署による税務調査の厳しさ

税務署の目は誤魔化せないというイメージはあると思います。税務署は、国税総合管理システム(通称「KSKシステム」)というものをもっており、毎年の確定申告·給与の源泉徴収票を通じて、国民の収入·財産を管理しています。そして、このシステムにより、現金の流れに租税回避の匂いを感じると、今度は金融機関に反面調査を行います。このとき、税務署は法律※1に基づいて金融機関に質問※2を投げかけます。金融機関は回答義務がありますので包み隠すことなく資金の流れを税務署に開示することになり、追徴課税に繋がることになります。
 ※1 国税徴収法(国税に関する法律)
 ※2 質問検査権(すべての金融機関に対し入出金記録を開示させることが可能)。