現在の日本の離婚率は約40%※で年々増加傾向にあり、実は良く耳にする「3組に1組」ではなく、「5組に2組」が離婚しています。そして、元々何かしらの事情により離婚するのですが、経済条件を巡ってさらに揉めることになるのが一般的です。今回は、離婚をお考えの方に向けて、一般的な離婚の進め方と離婚における経済条件の整理について考察したいと思います。また、経済条件の整理においては「不動産の時価」が問題になりますので、この点についても触れたいと思います。
※ 厚生労働省の統計データ(人口動態統計の概況)による
1.一般的な離婚の進め方(離婚の種類)
配偶者と離婚したいときは相手方との話し合いが可能であれば、まずは離婚の協議を行い、難しければ裁判所が関与する形で離婚を進めます。
①協議離婚
民法では「夫婦は、その協議で、離婚することができる(民法第763条)」と規定されており、話合いで離婚の条件が合意すると、市区町村役場に離婚届を提出して離婚が成立します。この離婚方法が弁護士費用等もかからず安価なので、まずは協議離婚に向けて話合いが行われることが一般的です。
②裁判所が関与する離婚
しかし、協議の中で条件を調整することが難しい、またはそもそも話し合いさえ難しいケースもあります。そういった場合は、裁判所に持ち込むことになります。
裁判と聞くと「弁護士」というイメージになりますが、この時点で必ず依頼しなければならないわけではありません。
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- (1)調停離婚
裁判所に離婚を持ち込む際、まずは「離婚調停」を申し立てることになります。離婚調停では裁判官や調停委員を経由して相手方と話合いを行います。調停委員は弁護士、医師、大学教授、公認会計士、不動産鑑定士、建築士などの専門家などから選出される非常勤の国家公務員です。この調停委員による聴き取りは原則として夫婦別々に行われるため、お互いが感情的になることなく、円滑な話し合いを期待できます。 - (2)審判離婚
離婚調停で合意形成できない時、子供の親権を早く決めた方がいいと裁判所が判断した場合ややむを得ない事情で片方が調停に出席できない時は家庭裁判所の「審判」の手続きによって離婚が成立することもあります。しかし、夫婦の片方が異議申し立てをすると無効になることもあり、審判離婚が成立するケースはあまりありません。 - (3)離婚裁判
従って、離婚調停で合意形成できない場合は、ほとんどの場合、離婚裁判を行うことになります。この段になると、夫婦の双方は代理人として弁護士を雇用し、離婚の条件を巡って意見を主張します。
- (1)調停離婚
2.離婚における経済条件(離婚で支払うお金の種類)
離婚においては様々な条件が協議されますが、以下では経済条件について考察します。
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- ①財産分与(清算的財産分与)
離婚においては、夫婦が婚姻生活中に協力して築いた財産を分与します。配分は民法に規定があるわけではありませんが、基本的に2分の1ルール※という考え方がとられます。もちろん諸般の事情により2分の1ルールによる配分が調整されることもありますが、その主張のためには基本的には弁護士を代理人として雇用することを当社では推奨しています。現預金のほかに、不動産、有価証券、生命保険の解約返戻金、年金受給権、退職金見込み額などの複数の財産がある場合には「財産目録(財産一覧)」を作成します。
※ 2分の1ルールが原則とされる考え方
(1)夫婦のどちらかが働くのか、二人とも働くのか、家事・育児の役割分担をどうするかは、夫婦の話し合い・合意により互いに協力すべきものである。
(2)双方が対等・平等と評価されるべき夫婦が、合意の上で、互いに協力しあっているのであるから、その協力に対する評価は、その協力の形が就労であれ、家事の形であれ、対等と評価すべきである。
②慰謝料
「離婚慰謝料」とは、自分の責任で離婚の原因を作った側が、相手に生じた精神的損害を補てんする目的で支払う金銭であり、不法行為(民法第709条)に基づく損害賠償と整理できます。この慰謝料の金額について合意形成できない場合が多く、その場合には、当社では双方代理人(弁護士)をたてて協議することを推奨しています。
③養育費
子供がいる場合、離婚により夫婦関係は消滅しても、親子関係は消滅するわけではありません。そのため、夫婦が離婚した場合であっても、民法第766条の規定により、親は子どもの養育費を分担する必要があります。養育費を支払う義務があるかどうかは、離婚について責に帰すべき事由があるか否かとは関係がありません。
したがって、たとえば自分の不貞行為が原因で離婚することになったとしても、監護親である場合は、相手に対して養育費を請求できます。
なお、養育費の金額は養育費を払う側ともらう側の年収、子供の数・年齢によって算定表が準備されています。こちらで相場を把握することができます(養育費算定表)
④婚姻費用
夫婦間で所得差がある場合には婚姻費用が協議されることもあります。「養育費」が子どもの養育を目的としているのに対し、「婚姻費用」は所得差がある配偶者の生活費を補填する目的としています。この婚姻費用について養育費同様、支払う側ともらう側の年収、子供の数・年齢によって算定表が準備されています(婚姻費用の算定表)。
- ①財産分与(清算的財産分与)
3.離婚の財産分与では「不動産の時価」を巡って対立します
①不動産の時価を巡る対立の流れ
不動産を所有する場合、財産分与において財産目録(財産一覧)を作成することが一般的であり、この財産目録の作成において、金融資産は算定時点における金額が明示されますが、不動産は時価を決めなければいけません。この時、例えば夫が妻に財産分与として財産を支払う立場の場合、夫側は「不動産の時価が低い方が有利」であり、妻側は「不動産の時価が高い方が有利」になります。そして、夫は知り合いの不動産会社に「なるべく低い査定」を依頼して妻に査定書を提示し、その査定書をみた妻は「もっと高いのでは?」と考えて別の不動産会社から査定書を取得したとします。妻側の不動産会社は媒介依頼が欲しいため「もっと高く売れますよ」と高い金額の査定書を提出し、不動産の時価を巡って見解が分かれてしまうことになるわけです。
②合意形成を図るためには
不動産の時価を巡って認識が対立した場合には、財産分与の合意形成が難しくなるため、離婚協議不調となり、裁判所にて離婚調停を進めることになります。この時、調停委員から不動産の時価を確定するため、不動産鑑定評価書の取得を推奨されることが多くあります。不動産会社の査定書ではなく、国土交通省が定める「不動産鑑定評価基準」に沿った「不動産鑑定評価書」で価格を決めること助言されるのです。
4.当社サービス
当社では、財産目録の作成を進めるにあたり、問題となりやすい「不動産の時価」を不動産鑑定評価基準に沿って算定し、お客様のご状況に合わせ、財産目録の作成方法や離婚の進め方をアドバイスしており、提携弁護士の紹介も可能です。
不動産鑑定評価・不動産価格調査をご依頼頂いた後に、離婚により不動産をご売却されることになった場合、当社に売却をご依頼頂けましたら不動産鑑定評価報酬または不動産価格調査報酬は返還し、無料扱いとさせて頂いております。
不動産をご所有されていて離婚をご検討されている方は、問い合わせフォーム(問い合わせフォームリンク)またはお電話(03-4500-6270)にてご連絡頂ければと存じます。
以 上